リアルワールド ー 桐野夏生
新年早々すごい作品に出会った!
話題作との紹介がありまさにその通りだと思う。本当にリアルの世界で起こり得ることと考えると少しぞっとした。
物語はそれほど複雑ではなかった。高校生の尊属殺人とその逃亡、その逃亡に関わった4人の女の子という設定、それぞれの視点から物語が経過するというパターンである。
違いといえばこのパターンではよくある登場人物それぞれの視点から少しずつ物語が進み、最後のクライマックスで合流され、事件あるいは事実の全貌が明らかになるというミステリーの展開ではなく、登場人物それぞれの視点から、その人物の性格、隠されてる一面、またその行動により、結末を影響させて行くという内容だった。
"土台"の事件とは別の物語を読めた気にもなった。読んでいて緊張感もあり、官能的な刺激もあり、また若者という設定により、若さ故な考えと、若さ故の悩みと、その葛藤という部分からかなり刺激受けた。
あくまでも自分の感想に過ぎないけれど、登場人物それぞれの性格、またはその人物の背景など、きっと現代の社会の縮図なのではないかと思った。自分の若かった頃はある登場人物と似ていて、共感できたところはたくさんあった。
それに対して歩んできた人生が違うためほかの登場人物には少々理解できなかった部分もあった。そのおかげでこういう人達の心理に少し勉強できた気がする。
大人になり親という立場でこの小説を読み、少し理解できず唖然する部分もあったけれど、改めて自分はあの当時もし何かのことの選択を間違えたり、誰か別の人と絡んだりしていたら自分の人生も大きく変わったのではないかと思って、ホットした気分にもなった。
自分にとっては過去の話だったが、今度は自分の子供が将来経験するその時期、親としての在り方、子供に与える様々な影響、子供の成長の見守り方など、アドバイスをもらったように思う。
きっと正解は無いと思うけれど、できるだけ"取り返しのつかない"ことにならないように注意しなければならない。