パラレルワールド・ラブストーリー 東野圭吾
何という偶然でしょう!本棚に積読していたこのパラレルワールド・ラブストーリーなんだが、映画の公開と同じ時期に読んでいたとは!新作ならまだしも、もうリリースされて20年以上経ったこの作品なので、本当にすごいタイミングで、何とも言いようがない不思議な気分になり、こんな読書体験は初めてだった。
物語の序盤は脳科学、それからなんと言ってもタイトル通りのパラレルワールド、二つの世界が存在し、並行しているというSF小説の要素が満載。一方、男女の三角関係という恋愛小説要素もあり、自分にとっては結構斬新なジャンルだった。が、言い方を変えればそれまでのことだったとも言える。
その時、まだこの物語の"面白さ"に気がついてなかったからだ。
中盤に差し掛かった頃、ようやくこの物語の"真髄"に気づいた!これが作者が書きたかったものなのだ!自分の想像を一気に覆してくれた。
東野圭吾の得意技、ミステリーなのだ!
これがこの物語の本当のジャンルだと思う。
そこから話は一転、謎解きのような展開になり、パラレルワールドから少しずつヒントを得たり、読者が展開を当てられそうな場面を作ったりしていたが、理由は何だろうと謎は深まるばかりだ。
その理由に関しても文章の雰囲気からおそらくほとんどの読者が同く予想しそうな結果だったが、そこもおそらく作者が思わせてくれた罠に見事にハマってしまったのではと思う。実際僕も予想が外れたのだ。そういう裏切りもかなり面白かった。
無論、最大の裏切りはパラレルワールドの本当の意味なのだ。
ミステリーとしても別格なミステリーだと思う。偶然にも映画化され、原作とどう違うのかも少しは興味がある。