西の魔女が死んだ ー 梨木香歩
読了。
学校での人間関係に躓いでしまった主人公のまいがお母さんのおすすめにより、西の魔女 ー イギリス人のおばあちゃんの家で過ごした心の元気を取り戻したその期間の物語であった。
現在は日本に住んでいるイギリス出身のおばあちゃんと暮らした時間を一つ一つのエピソードで紡ぎ合わせていた。
そのエピソードの数々も決して息を詰まらせるようなすごい内容ではなく、ごく普通に暮らしている日常の描写だけだが、それを読んでいて心が温まり、癒され、まるで自分のおばあちゃんと一緒に暮らしているのではないかと彷彿させてくれるようだった。
それを"魔女の修行"と呼び、まいも次第に心が落ち着き、元気を取り戻せた上、おばあちゃんにたくさんのことを学び、人間としての成長も遂げた。
また、本編中に数えきれないほどたくさんの植物が出てきて、おばあちゃんやまいがどんな世界にいるかを繊細にかつ鮮明に説明が出来、植物に囲まれたその癒されをかなり引き出せる効果があったと思う。
作者の植物についての知識に脱帽するほどだった。
ただし外国人の僕にとってはある種の"専門用語"でもあるため、かなり苦戦をしていた自分がいたのだが、植物について詳しくなったのも事実だ。
特に "銀竜草"は衝撃を受けた。実際に見てみたくなるくらいだ。
やがてタイトル通りおばあちゃんが亡くなったのだが、悲しさを感じさせないようにこの小説で一貫していたその穏やかなトーンでそれを書かれていた。
おばあちゃんとまいとの間に出来た絆により、最後の"盛り上がり" "感動シーン"の演出は最高に良かった。
グッときて心がとても優しい気持ちになった。
最後の"ボーナストラック"的な「渡りの一日」も最初はまいの話とはわからなかったが、本編とは違うまいの一面も見れてよかったし、またその脚本の構成もとても良くて、完成度の高い短編として非常に読み応えがあった。