Kitto 自己満の随筆ブログ

日本の小説をこよなく愛する香港出身の者による読書感想やふとした日常の綴りが中心になるブログです。

麦本三歩の好きなもの 住野よる

麦本三歩の好きなもの ー 住野よる

 

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友人から借りたこの本、新刊なので単行本で読むことが自分にとっては結構新鮮な気持ちだった。いつも文庫本より本のボディがしっかりしていてゆったりとした体勢で落ち着いた角度で読めたことは非常によかったとは思うけれど、大きさがどうも不便に感じる。持ち運ぶにも手で持って読むときにもその感想が大きかった。大きいから読むのに楽だと言ったのになんという矛盾なのだろう?と自分にツッコミを入れたくなることもなくはない。

 

さて、本題に入ろう!

この本についての感想、簡単にまとめると”ほっこり”との一言だと思う。レビューや本の宣伝にも似たような紹介ばかりで、自分はこの手の話は実は結構好きなので、住野よるの文章も読みやすいし、ちゃちゃと読み終わって友人に返そうと思ったのだが、思いも寄らぬ結果になってしまった。

一ページ目から猛烈にのんびり、ほっこり、ほんわか、ふわふわ、ゆらゆらという言葉がとても似合うような雰囲気を感じた。悪意を抑えずに言うと、つまらないじゃん!

しかもそれは全書を通してもこの感じだ。麦本三歩という主人公の日常を綴る散文を10文章を集め、本にしたスタイルだ。それぞれの文章は順番によって全く関係がないとは言えないけれど基本はひとつひとつ独立した別々の話だった。

 

主人公の日常によるほっこりする話なので、話の展開がとにかく遅い、もしくは展開がないと言ってもいいほど、緊張感あるいは続きを知りたいという気持ちが全く起きなかった。

内容自体は個人的に良くも悪くもないという具合だった。むしろ主人公の性格、考え方に共感できた部分は結構多かったと思う。ただそれを集中になって読むことは到底不可能だとは思う。2、3ページも読めば気が散ってしまう。増してそれは10くらいの文章があるからかなり時間がかかったのであった。本当に参った。

 

でも勉強できた部分もかなりあったと思う。何もオチや事件性のない話の題材をいかに味付けをし、表現の方法でより面白くし、文章として物語にまで完成させられた作者の文章力には脱帽する。かなり勉強になったし、それに一見何も目的のない話なのだが、実際”愛”というテーマは共通しているのではないかと思っている。

愛で主人公の毎日が面白くもつまらなくも結局笑顔でいられる。人を傷つけたり、騙したり(実際はどうだろう、作品を読んだらわかってもらえる)、悪は基本存在しない世界だった。

そんな世界、そんな”愛のある”毎日は一番ほっこりさせてくれるのではないか?