ノルウェーの森 (上下) ー 村上春樹
有名な作家に有名な作品だから読書を趣味にしているのならこれは読んでおこうという見栄張りの動機だったが、読んでみればすごい世界観に圧倒された。表現の仕方などとても自分に影響を与えてくれた作品ではあった。
正直最初は読み切れるかどうか戸惑っていたくらいだった。慣れない作風、表現の仕方などなかなかわかりにくかった。物語の進行についていけていないという部分すらあった。
けれど慣れてきたら物語の世界に少しずつ溶け込んで、その哀愁の漂う雰囲気、喪失感、天気で例えると毎日が曇りというどんよりした虚しさからとても落ち着きを感じた。
物語自体は恋愛の話で、特に激しい起伏もないが、主人公の過ごした毎日とその思いを繊密に綴り、そんな描写が虚しさや孤独の感じを物語中にずっと漂わせていた。
また、すごいのがそのセックスシーンの部分で、かなりストレートに書かれていて、息を呑むほど大胆だった。
登場人物も多く、それぞれの性格も違うし、二冊を読んでも飽きはしなかった、中には勉強になるような話もあった。
上編、下編の二冊編成でも主人公の孤独、漠然としている毎日、これだけで物語が成り立つ上ダラダラした感じもせず、喪失感に包まれ、読めば読むほど味が出て読め答えを感じるのが村上春樹のすごいところなのではないかと思う。