東京島 ー 桐野夏生
東京島 ー 桐野夏生
桐野夏生の2作目となる。
遭難して無人島に漂流した人たちのサバイバルの話で、しかも女が一人しかいないというかなり特別な設定、最初はとんでもないエロい話で、男の陰獣的な挙動とか、人間の醜い一面が満載なとんでもない物語ではないかと想像して見たけれど、どうやら作者はもっと人間の深いところの部分を書いてくれたようだった。
遭難した日本人のグループとホンコンと呼ばれる中国人グループについて、日本人の国民性の集団性の特徴と生き残ることが最優先の中国の特徴など、無人島ながらどこか真実味を帯びた話である。
また、脱出が失敗したり、救助をいつまで待ってもなかなかこない絶望感によって、人間の心境の変化や、相手に対する接し方、発狂ぶり、堕ちていく姿など、想像してみたらかなりリアルでぞっとしたりするところもあった。作者の着眼点は本当にすごいと思った。
よくある映画のような展開ではないため、刺激、ドキドキのような雰囲気は一切なかった。ただし、どこかリアルな話を元にそこまで一冊に仕上げれる作者の脚本力、構成力にも脱帽する。
正直、面白い作品とは思わない自分の中ではいまいちの作品だが、1物語としてはそれなりに面白いし、結末もちょっと予想外だが、終始ノンフィクションながらリアルな物語と感じつつ、なんだか迫力のある作品だった。